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22春闘勝利 プロレタリア革命の前進のために 労働者の闘いを組織しよう 岸田首相は二〇二二年一月一七日、第二〇八回通常国会の冒頭で就任後初めて施政方針演説を行った。その内容は、具体性も新鮮味もなく、安倍―菅と続いた政権を踏襲する内容でしかない。特に「新しい資本主義」と題する項目については、労働者にとって批判の対象でしかない。われわれは今や終わりが始まった資本主義を倒すために、更に戦列を整え前進していこう。われわれに必要なことは言葉による批判だけではなく、行動と連帯・団結である。 ●1章 終わりが始まった資本主義 岸田は、施政方針演説において次のように語っている。 「市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。 世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てが上手くいくという、新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの『経済社会変革』の動きが始まっています」。 あたかも自分が今までの資本主義の弊害を乗り越え「新しい資本主義」の初めての旗手になったかのような言い方である。 しかし、この内容は、「グレート・リセット」という考え方で、二〇二一年の世界経済フォーラム(WEF)会議の議題となる予定(会議はコロナ禍の中、延期された)だった。この考え方は、資本主義の下で、起きているさまざまな問題を解決するために、これまで当たり前であったシステムを白紙に戻し、まったく新しい仕組みを一からつくり出し、より公平で持続可能な社会を実現するというものである。特にウィズコロナ、アフターコロナに向かって必要なものとされている。 日本では二〇二〇年一一月一七日に経団連によって提言された「。新成長戦略」がそれであり、二〇二一年度経労委報告の背景となっていた。この「。新成長戦略」とは何かについては、「はじめに」を引用しておきたい。 「今回のパンデミックは、世界経済を景気後退に追い込み、資本主義のもとで進行していた格差を浮き彫りにしています。そうしたなか、経済界は、資本主義社会の主要なプレイヤーとして、事業活動を通じ、多様な主体との関わり合いの中から『価値』を協創・提供し、環境問題や経済的格差等の課題解決に、積極的に取り組む責務があります。そこで、新しい資本主義の形としてサスティナブルな資本主義を基本理念に掲げ、以下の三点を重視しつつ、成長戦略を提言することとしました。 第一は、資本主義をサスティナブルなものとするための、パイの拡大と適正な分配による、国家間、世代間、職種間、地域間等の格差の是正です。 第二は、将来にわたる持続的な成長を可能にするための、子ども・若者の教育、子育て世代への支援、若手研究者への支援、次世代技術への投資といった、未来への投資の重点的な拡充です。 第三は、SDGsの達成年度とされる二〇三〇年の経済社会の未来像を描きそこからバックキャストして特に重要となるアクションの明確化です。可能なアクションから実行に移すことで、力強い成長軌道に戻す経済対策となることも期待します。この提言のタイトルは、これまでの成長戦略の路線に一旦、終止符『。』を打ち、新しい戦略を示す意気込みを表しており、今後、進むべき大きな方向性を提言しています。 決して平易な道のりではありませんが、もはやこれまでの延長線上の漸進的な改革の先には資本主義の未来はないことを覚悟し、果敢に取り組んでいくつもりです」。 以上のように、岸田の言う「新しい資本主義」とは何ら目新しいものではなくブルジョアジーが自分たちの延命のために考え出した方策をブルジョア政治委員会たる政府自民党が政策として打ち出したものである。安倍―菅が行っていたこうした役割を岸田は引き継いでいるだけである。「格差の是正」と言いながら、実際は、より「力強い成長軌道」作りのために様々な分野に「投資」を行い「資本主義をサスティナブル(持続可能)なものにする=ブルジョアジーが儲け続ける構造を作ることである。だからこそ岸田は自民党総裁選時の「金融所得課税の税率アップ」をあっという間に取り下げてしまい、総裁選後も首相就任後も封印してしまった。また、「賃上げを行った会社には法人税の引き下げを行う」としているが、法人税を支払っているのは、ほんの一握りの大企業であり、多くの企業や労働者には絵に描いた餅にすぎない。大企業では、連合系の正社員組合員の賃上げのみ行われ、非正規労働者や多くの下請けやそこに働く労働者を切り捨て「法人税の引き下げ」を手に入れるのである。 「市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題」だと。これらは現代資本主義がもたらしたものであり、この問題の根本的な変革は資本主義体制の打倒でしかない。彼らが吐露していることは「今まで通りの支配ができなくなった」という嘆きでしかない。だが、問題なのは労働者階級と共産主義者が真の未来を勝ち取るための闘いに立ち遅れている事である。何としても闘いの中からこうした課題を克服し、人民の護民官としての役割を果たし、勝利を勝ち取っていこう。 ●2章 分解する労働者 大規模な産業再編成が進み、労働者の分解が起きている。これは、コロナ禍前の第四次産業革命が描いていたが、コロナはこれを一層加速させた。IoTなどのように、情報のみならず生産・流通(販売)・交通等々あらゆる分野へとIT・ICT化を進めていくことである。例えばコロナ危機下で明確化したが、リモート化できる産業労働者と、できない産業(多くは対人サービス分野)の労働者の分解である。 労働者は、次のように分解している。一つは、先の「働き方改革」で高度プロフェッショナル制度の対象となった社内管理・統括や、専門的知識による開発・取引・コンサルティング等を担う労働者群である(いわゆるブルシット・ワークとも呼ばれる労働をしている人達。資本家・富裕層の利益拡大にとって必要な高給取りたちである)。 二つ目は、専門技術・社会性のある労働でありながら、生産性(資本利益)が低い公務や教育の正規職と委託や非正規の労働者。製造、流通、清掃、配達、医療・介護、保育、建設、補修など低賃金・劣悪労働条件の下で働く労働者群である。これに持続的に従事する有期雇用や派遣・委託・自営労働者もこの中に入る。 三つ目は、使い捨て労働力として転々と不安定雇用を流動する労働者群。一九九〇年代「新時代の日本的経営」の下で深まったアトム化し・地滑り的に下層化する労働者群である。ニート、フリーター、一般派遣のような形もあるが、自営業や半委託業(それらの臨時雇用)、また最近広まっているウーバ―イーツのようなギグワーカー等も含み、労働法からの除外対象となっている部分も少なくない。 こうした中で資本の側の労働者支配も変化してきた。すでに資本家階級は、「第四次産業革命」が公然と主張され始めた六年ほど前から「現在の労働法は戦前の工場法をベースに作られており、時代に合わず、国際競争力を削ぐ」と主張してきた。戦後労働運動が獲得していた諸権利ははく奪されていく。具体的には、労働法が規制する所定の時間・場所を取っ払い、労働政策の根幹を「生産性の向上」に置き、資本利益の成果に応じた賃金や労働条件を可能とする。今、拡大されている雇用に依らない働き方は、「個人事業主」とされ、労働法適用対象外とされている。また、「副業(ダブルワーク)」という「雇用責任」があいまいな働き方が始まっている。そしてコロナ禍にあっては「在宅勤務」が奨励され労働時間管理や労働環境の整備という本来雇い主が行わなくてはならない労働環境責任が労働者個人に押し付けられている。 以上のような地滑り的に下層化する労働者群の貧困や無権利だけではない。限界に達しつつある地球環境がもたらす災害、資源・食料・水などをめぐる国家間紛争や略奪抗争等々、社会全体がこれらから生じる社会的荒廃にさらされている。 ●3章 労働者の現状と労働組合 こうした中でどのようにして闘い、社会的結合・連帯をかちとり、その力で解決していくのか。労働運動、その基盤である労働組合がこの役割を果たすことができるのかが問われる時代である。 上記で見てきたように、大規模な産業再編と労働者の分解、貧困化し荒廃していく社会の中で、弱肉強食・万人の競争に解体された個々バラバラの労働者を、自己防衛と自己解放のために、資本家と対峙する社会勢力・団結体の主体へと成長させていく有力なツールとして労働組合はある。とりわけ、上記二つ目・三つ目の労働者の組織化を考えるとき、所属する企業や雇用形態を問わず一人でも入れ、同じ地域や産業(業種)の労働者と団結して、生存と権利のための闘争を担うことができる産業(業種)別労働組合や地域一般労組(合同労組、ユニオン)の意義は大きい。 しかしながら日本においては、産別労働組合の歴史は浅く、その萌芽は政府・資本家によって徹底的につぶされてきた。「連合」では大企業労組が産業ごとに連合して「産別」を名乗っているが、欧米で一般的に産別労組とされているものとは全くの別物である。日本で産別と言えるのは、港湾荷受け日雇いの闘いから始まっていった全港湾、封建的土建業の劣悪条件との壮絶な闘いから生まれた全日建連帯が、かろうじて存在している。この数年、その壊滅をめざした国家的攻撃が行われている。 また地域ユニオン(一九五〇年代には中小零細企業労組の結集体として合同労組と呼ばれ、総評時代には一般労組・地区労などに整備され、総評解体以降、ユニオンという名称が用いられた。それぞれに込められている個別の歴史的意味合いはあるが、基本的には同性質のものである)は、外部からの支援(例えば、コミュニティユニオンの連合加入)、もしくは内部に一定規模の分会や支部がない限り、その必要性にもかかわらず、単体での維持は経済的に厳しいものがある。 労働者の多くはこのような中で、個別に分断され、流動化し労働法から除外されている。そして、貧困・不安定雇用・長時間労働・教育等からの排除などによって疲弊し、闘いへの持続的参加の条件がうすい。争議は駆け込み寺の問題解決型となる可能性が高い。左派労働組合はその中で苦闘している。 しかし、駆け込んでくる労働者はほんの一握りであり、多くの労働者は無権利状態の中にいる。 一方、官公労に代表される組合や大手民間において組織化されている組合があっても、その職場にいる労働者の多くは「安定した雇用」のなかにあることをもって自分は「勝ち組」という意識が強い。こうした人々は、幼い時から「競争」にさらされ「他者との軋轢の回避」という処世術を身に付け、「他者との共同」を嫌う。問題が起きても「自己責任」=「自分のせい」としてそれを顕在化させることを嫌う。「今だけ、金だけ、自分だけ」良ければいいという労働者は組合にも入らない。 こうした労働者たちをどのように組織化するのかが大きな課題である。木下武男の『労働組合とはなにか』などで言われているように、欧米の産別労組には、その前史として長きにわたるギルド・職工組合の歴史があり、職務明確化、同一条件、同一労働同一賃金などが労働者の文化として定着していた。戦前日本の労働運動は、職務別賃金を排斥し、敗戦直前まで生活給・皇国賃金という文化の中に置かれていた。敗戦は労働者階級の闘いによってではなく、帝国主義間戦争と民族解放闘争によってもたらされたものであったため、旧い文化を内包したまま戦後動乱期を経て、今日に至った。要するに、欧米型産業別労働組合を支えるだけの文化(思想)が社会的に未形成なのである。結果として労働組合は企業別に企業内に組織され「会社の利益=労働者の利益」という考え方が色濃く存在している。例えば、アマゾンの労働者はここ数年アマゾンが最も利益を上げる「ブラックフライデー」(感謝祭の翌日で小売業者、大型店舗にとって、顧客に素晴らしいお得なセールを提供することで、年に一番の売上高を記録する、店側にとっても重要な日)にアメリカを中心に世界中でストライキが行われている(二〇二一年は一一月二六日)。資本側が最も儲けるために労働力を必要としている日にストライキ戦術をぶつけ労働環境や賃金の改善、そして昨年はアマゾンによる地球環境の破壊に対する要求も課題となった。残念ながら日本ではこうした動きに呼応できていない。「会社あっての労働者」という意識が染みついている一つの証左である。 ●4章 連合による敵対を許さない 以上のような現状の中で、日本の最大ナショナルセンター連合は昨年一〇月六日、製造業労働組合(JAM)出身の芳野友子を連合会長として選出した。初の女性でしかも大企業出身でもないことで大いに注目された。彼女が女性であることや中小企業が多い製造業の組合出身であることから女性や中小企業労働者の声が届く連合となるのではないかとの期待もあった。しかし、七日会長就任後初の記者会見を開いた際、次期衆院選で立憲民主党中心の政権が樹立された場合、共産党が「限定的な閣外協力」をするとした立民、共産両党の合意について、「共産との閣外協力はあり得ない」と述べ、否定的な見解を示した。また、連合は一二月一六日の中央執行委員会で、先の衆院選に関する総括を行った。総括は、敗北した立憲民主党に対し「政権を任せてよいと思える枠組みを示せたかどうか戦術以前に十分な検証が求められる」と指摘し、立憲と共産党の連携について「(連合が一丸となる)困難さを増長させた」と厳しく批判した。また、本年夏の参院選については、立憲、共産を念頭に「目指す方向が大きく異なる党同士の連携・協力、政策協定締結は理解を得られない」とした。一月五日に開かれた「新年交歓会」には岸田首相や経団連の大橋副会長が来賓として挨拶している。そして岸田首相が重点的政策としている「新しい資本主義実現会議」の構成メンバーとなっている。 また連合は、「生産性三原則」を掲げている。これは、「雇用の維持・拡大、労使の協力と協議、成果の公正な分配」のことである。まさに日本型企業別労働組合の下では、非正規労働者の増大や下請け化を容認し、団体行動権(ストライキ権)は行使しない、成果の企業内での分配となる。連合の「二〇二二春季生活闘争方針」では、「生産性三原則」に基づく取り組みを社会全体へ、「取引の適正化」を社会全体の課題にという今までの取り組みを加速するとしている。「春闘の消滅」と批判されている二〇一九年春闘路線の継承である。「賃上げ」重視から「賃金水準」重視への転換は、要求額も妥結額も分からない産別自決から企業別自決への転換が行われた。大衆行動も共闘もない「春闘」に対して岸田は「新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現する事を期待します」とエールを送っている。連合は、どこまでも日帝のお先棒担ぎに成り下がろうとしているのである。 例えば、二〇二〇年一〇月一五日郵政労契法二〇条裁判の最高裁判決は画期的なものだったが、会社はその判決を踏まえた制度改正をするべきなのに、判決を逆手にとった改悪案を提示してきた。その内容は①期間雇用社員の雇用上限の制度の新設、②有給の病気休暇の見直し、③夏期・冬期休暇の見直し等である。これは正社員の現行制度の処遇を引き下げるものだ。連合内の郵政労働者の組織であるJP労組は、会社側と妥結しようとしたが、職場の組合員から妥結への批判意見が噴出している。格差の是正は「非正規雇用の待遇改善によって行われるべきであり、正規職員の待遇を引き下げることではない」という当たり前のことも理解できない連合指導部は批判にさらされて当然である。 ●5章 組織化に向けて ではわれわれはどうすればいいのか。第一に労働運動、組合運動が多くの労働者に見えるようにすることである。それは職場内のチラシ配りや壁新聞、街頭での宣伝行動やデモ、職場での相談活動など今までの労働組合が行ってきたことをうまずたゆまず、地道に続けていくことである。職場で問題が起きたら、できる限り組合員や労働者の見えるところで異議申し立てをする。当たり前のことのようであるが、現実にはこうしたことすら困難になっている。こうした地道な活動が組織化のカギである。 また、同じ産業なら誰でも(企業・雇用形態・性別・国籍などを問わず)加入でき、自らの生活と権利を守り、仲間とともに活動する産別労働組合に向けて、業種や産業で団結して闘う労働者・労働組合を作っていくことである。最初は企業内労組でも、ユニオンの一人組合でも、形は何から始まってもいい。全日建や全港湾など産別労組はすでに行い、それに続き非常勤教育労組やケア関係労組が切り拓こうとしているが、政府・資本に対する共通要求を掲げ、共同の積み重ねを行いながら、より広い範囲での(企業内だけ、特定の地域だけ、職種だけの……から脱却し)横並び団結として産別労働組合をめざす運動が必要である。現場闘争力、それを支える生存権を要求することや産業別最賃や全国一律最賃に向けた闘い、均等待遇の要求など社会的連帯などで労働者文化をつくり上げていくことなくして、闘う産別労働組合を闘いとることはできない。 地域ユニオンは、多くの非正規雇用・女性・外国籍などマイノリティの労働者に開かれた窓口であり、孤立した労働者の居場所であり、集団交渉・行動の身近な地域の応援仲間であり、広く社会キャンペーンを担って啓発活動をおこなう労働組合である。それゆえ名称は異なっても、さまざまな形の地域ユニオンが困難な中でも組合維持をし続けている。この力をより発展させるために奮闘しよう。 またユニオンにたどり着いた労働者の背後には、職を奪われ貧困化し、労働者としての闘いにもたどり着かない棄民とされていく労働者・家族が膨大に存在している。現状の労働組合自身が、この支援を担うだけの力はない。だからと言って距離を置くのではなく、相談機能の幅を広げ、種々の反貧困運動や貧困支援活動、その背景団体(女性であったり、障害者であったり、滞日・在日外国人であったり)と連携をとり、相互の役割を発揮できるような関係作りが、今後ますます重要になってくる。こうした闘いは、「年越し相談村」や「女性による女性のための相談会」として実践が開始されている。また、入管難民法改悪時には、労働組合と当事者の外国人、共に生きる若者を中心とする人々の力が国会前に結集した。 賃労働と資本関係の中で闘う労働組合にとって、経済闘争と並んで重要なのは差別分断との闘争であり、権利闘争である。私たちは自分の労働力商品を正当に売るために団結するだけでなく、職場の主人公としての労働者の尊厳を実現するために団結を前進させる。差別や分断は団結力を弱め損じさせるものであり、意識的により弱い立場の労働者と連帯していくことの重要性を結集した労働者と共に確認していくことも必要である。労働者は、こうしたことを闘いの中で学んでいく。産業別組合づくりを意識した企業内の闘いを経糸とし、ユニオンなどの未組織労働者の組織化を緯糸とする労働者の組織化の重層的闘いを作り出そう。 また、平和でなければ労働者の生活は安定して営むことはできない。労働者が貧困からの脱却の出口として侵略者になって行くのか、国際的な労働者の連帯で戦争への道を打ち砕いていくのかが問われる時代のなかで、労働組合が反戦・平和、国際連帯の課題を闘うことは極めて重要である。 世界中のブルジョアジーが今まで通り支配ができないと悲鳴を上げている今こそ、労働者階級の闘いを組織し、被差別大衆と連帯し、国際的な団結で支配者どもを追い詰めていこう。 ●6章 22春闘 誰一人をも取り残こさず、貧困、格差、差別をなくす闘いを作ろう! 二〇二二春闘はコロナ禍の中で始まっている。コロナ禍にあっても労働者に対して居丈高に振る舞い、立ちはだかる日帝―岸田政権と対決する闘いを開始しよう。 ▼6章―1節 22春闘を巡る情勢 コロナ禍の中で弱い立場におかれた人々に更にしわ寄せが集中していることが明らかとなっている。特に、女性労働者、高齢者、技能実習生などの外国籍労働者は文字通り身を切る思いで日々の生活を過ごしている。「年越し支援コロナ相談村」や「女性による女性のための相談会」へは、こうした困難に直面する労働者が連日相談にやってきた。コロナ禍による長引く失業状態の中で、住むところもなく、所持金が数百円という労働者がいた。また、住む家を追われ、またはDVから避難しているため保険証もなく、高額な医療費を支払うことができず病状が悪化している人も訪れていた。そうした人々が年々拡大し、少しばかりの最低賃金の引き上げでは到底生活状況を好転させることはできないでいる。しかし、わずかな最低賃金の引き上げにさえ経済界・経団連は企業の経営が行き詰まると反対の声を大きくしている。最賃制度の見直しや不要論を政府に迫るばかりである。 この二〇年間日本の賃金は横ばいを続け、特に近年は更に低下を続けている。相対的貧困率は15・7%(二〇一八年)であり、先進国と言われる国々の中では高い水準となっている。子供の貧困についてはOECD中二七位という、教育や様々な分野で深刻な影響が指摘されており、新たに「ワーキングクラス」からはみ出す「アンダークラス」という貧困層の固定化が指摘されている。日本の自殺率は再び高まる傾向が顕著となるなかで、特に女性の自殺率は過去最高となっている(二〇二〇年)。少子高齢化が言われ、政府は子育てのための施策を並べてみせているが、根本的な誰でも子育てを含めて、生活できる賃金の保証がない状況を改善しようとはしない。大企業は利益を賃上げに活用することを拒否して内部留保や株式の配当金に充当し、労働分配率はOECD諸国の中で二二位という状態である。各国の労働者に対して賃金の引き上げが行われてきたことに比して日本の労働者の賃上げは停滞したままとなっている。そしてコロナ禍で医療現場や日常の市民生活を支えたエッセンシャルワーカーは余りにもひどい低賃金と労働環境におかれている。まさに労働組合の闘いこそが解決の鍵である。 ▼6章―2節 「非正規労働者の賃上げ、労働条件改善春闘」を われわれは、中小零細労働者、非正規労働者の労働条件改善の闘いを進め、また、非常勤公務員の処遇改善のために、官民連帯の闘いを重視して闘おう。「パートタイム・有期雇用労働法」を活用し「同一労働同一賃金」をかちとろう! 「パートタイム・有期雇用労働法」とは、非正規社員と正社員の間にある不合理な待遇差を禁止し二〇二〇年四月に施行(中小企業は二〇二一年四月)された。このパート・有期法は八条で「不合理な待遇差を禁止」、九条で「差別的取扱を禁止」し、さらに一四条で「雇入れ時の待遇について事業主に説明義務」を定めている、労契法二〇条に替わる法律である。 このパート・有期法第八・九条が定める同一労働同一賃金、均等待遇を職場で実現するため、同法に基づく初の裁判闘争が、二〇二二年一月、開始された。当該組合員は警備会社に契約社員として勤務し一〇年になる。正社員と同じ業務を担当しながら賃金は五万円も低く、賞与は全く支給されない。 全国二〇〇〇万人の非正規労働者の未来をかけて、基本給と賞与・退職金の差別を容認した最高裁判決と対決する闘いに連帯し、同一労働同一賃金を柱とする均等待遇を実現する22春闘を闘おう。 ▼6章―3節 最低賃金全国一律を実現し、どこでも誰でも一五〇〇円を実現しよう 働く全ての労働者の生活状況の改善要求に全力を挙げていくこと、その大きな闘いとして「どこでも誰でも最低賃金を一五〇〇円」に引き上げていく最賃闘争に全力を挙げよう。 どこでも誰でもとは、雇用形態や性別、国籍、働く場所(都市か地方か)によって差別されることなく、健康で文化的な生活を送ることができるために最低必要な賃金の保証を求めることである。そのために各職場で賃金引き上げを求めるとともに、企業内最賃の獲得と引き上げの闘いを強化しながら、全国一律の闘いへ法改正のために全国で大きな社会運動を構築することが求められる。全国キャラバンなど可能な取り組みのためナショナルセンターの枠を超えた多くの労組の協力を実現しよう。 ▼6章―4節 あらゆる働く人に労働法を適用させよう 公務労働者(会計年度任用職員も含む)やフリーランスの労働者は、現在労働法から除外され、ストライキ権、団体交渉権、団結権すらない状態に置かれている。特にフリーランスの労働者は「個人事業主」とされ、労働災害や失業時の補償がない。コロナ禍の中でこうした労働者は現在、休業・失業した場合はほとんど補償されていない。欧米では労働者性が認められ各種補償や権利があるのに対して、日本では無権利状態である。年越し支援コロナ相談村へは、フリーランスの労働者が数多く相談に来ていた。全ての労働者に労働基準関連法を適用させよう。 また、外国籍労働者とりわけ技能実習生については、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」が二〇一〇年七月一日に改定され、入国一年目から労働基準法上の労働者として、労働基準関係法令の適用を受けることになったにもかかわらず、相変わらず法令無視の状態が続いており、暴力、パワハラ、セクハラなどが絶えない。また、人権無視の入管法―入管体制の解体は急務である。現在、地域のユニオンなどが取り組んでいるが、この課題も春闘の闘いとして取り組もう。 また労働法自身を実際には骨抜きにしてしまおうという労働組合つぶしの大弾圧が、この数年、全日建連帯関生支部を標的として行われてきた。官邸やゼネコン、大阪広域協の意を受け、警察・検察・裁判所の一部が、正当な組合活動を「業務威力妨害」「強要・脅迫」などに捻じ曲げ、不当逮捕・拘束・有罪判決など国家的不当労働行為をおし進めてきた。マスコミもこれに乗じ、組合の要求やストライキを犯罪視する動きが進められてきた。この数年の闘いによって反撃が進み、裁判所での逆転勝訴が切り拓かれてきたが、労働者の団結権や交渉権、争議権を無きものにしようとする政権、資本家たちの攻撃がやむことはない。闘い取られてきた諸権利を断固防衛するとともに、その権利すら奪われている労働者に連帯し、労働法の適用を求める闘いを前進させていこう。 ▼6章―5節 九条改憲を阻止しよう! 昨年一一月解散総選挙の結果、自民党は一五議席減らしたものの二六一議席を獲得して過半数を維持し、公明党との連立政権は絶対多数の二九三議席を得た。立憲民主党、共産党などの野党共闘は議席を減らし、結果的に自民党への批判の受け皿となった日本維新の会(維新)は四一議席と解散前を四倍増することとなった。維新は自民党の補完勢力として野党攻撃を繰り返しており、自公に維新を加えると衆議院で改憲発議に必要な三分の二議席を超える三三四議席となる。憲法を守るための闘いは常に緊張した攻防となる。 本年七月に行われる参議院選挙は今後の改憲阻止闘争に大変重要な選挙となる。維新の松井代表は早速、今年の参議院選挙時に憲法改定の国民投票を同時に実施するべきだと発言し、憲法改定について国民民主党と連携を行うことを確認している。反戦、反帝、国際連帯は労働者にとって極めて重要な闘いである。九条改憲や緊急事態条項の創設を許さない闘いを強めよう。 また、沖縄辺野古への新基地建設を許さず、知事選に勝利しよう。 中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国への敵対を許さず、軍備力増強・敵基地攻撃能力反対の声を挙げよう。 日本の政治を根本的に転換させることは労働運動が担わなければならない課題である。そして、新型コロナ感染症の第六波の襲来の中、労働者市民を守る闘いが待ったなしに求められている。共に闘おう。 |
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